第20回定期演奏会 第二ステージ 男声合唱組曲「月光とピエロ」

男声合唱組曲『月光とピエロ』は、清水脩が堀口大学の処女詩集『月光とピエロ』より5編の詩を選んで作曲し、1949年自らの指揮で東京男声合唱団によって初演された。合唱曲の分野で初めて各曲の間で文学的・音楽的な関連性をもつ「連作歌曲」の様式がとられた。その結果、単に日本最初の男声合唱組曲としてだけでなく世界最初の合唱組曲となった。
 心で泣いて顔では笑うおどけた姿のピエロとしめやかな月の光りとに托して歌う人生の哀愁、美しく親しみやすい日本的なメロディーが、多くの人の共感を呼び、男声合唱の定番曲として歌い継がれている。
Ⅰ. 『月夜』
 ピエロが思いを寄せる女道化師コロンビイヌは、ピエロを路上に置き去りに。失恋の悲しみが、月の光の温かさを思わせる重厚なハーモニーで、穏やかに歌われる。
Ⅱ. 『秋のピエロ』
 おどけて泣き笑いの芸を見せながら、秋じゃ! 秋じゃ!と歌うピエロ。これも世渡りのためと自分に言い聞かせてはいるものの、人生の秋の侘しさに涙がほほをつたう。ピエロの姿を通して人生の哀愁が表現される。
Ⅲ. 『ピエロ』
顔をまっ白に塗ったピエロが、目一杯おどけている。その顔には一点の淋しさが浮かんでいて、強いて明るく振る舞っている。笑いに徹しようとしても隠し切れない心のにがみ、「身のつらさ」が歌われる。
Ⅳ. 『ピエロの嘆き』
ピエロを月の私生児と見立てている。生まれ素性も悲しいのに、母である天の月からもひとり離れ、舞台の上で泣き笑いをして世を過ごしている悲しさ。ピエロが心のままに生きられない不自由さを嘆き歌う。
Ⅴ. 『月光とピエロとピエレットの唐草模様』
 月の光の下でまるで唐草模様の様に絡み合いながら、歌い踊るピエロと女道化師ピエレット。
表面は明るくても心に涙を流している点で、彼らは似た者同士。日々の生活の悲しさを胸に抱えながら踊り続ける姿を、高らかに歌い上げて曲を締めくくる。
                                       (堀井 一宏)